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中央アジア・宇宙への最寄り駅(1960年)



今日は、モスクワからタシケントへと向かう鉄道の途中にある小さな駅の話を。

上の画像は1960(S35)年にソ連で発行された鉄道地図帳の中の1ページです。
アラル海(今では大部分が干上がってしまって環境破壊の象徴になっていますね・・・)から東へ200キロほど進んだ赤丸で囲んだ場所、南にシルダリヤ川が流れる中央アジアの広野に建つその駅の名は「チューラタム」(チュラタムとも)。

「スターリンとともに」と正面に書かれた蒸気機関車が驀進してくる表紙が印象的な、1947(S22)年のソ連国鉄時刻表を見ると、上述の立地からもわかるように、1日1往復の各駅停車とわずかの急行列車しか停まらない田舎の駅に過ぎません。
もっとも、上りは急行もすべて通過していることを考えると、停車する下り急行列車も行き違いなど何か運転上のやむを得ない理由があっての停車だったのかもしれません。



(上)1947年ソ連国鉄時刻表の表紙。 (下)チューラタム駅の時刻(赤線部分。上下で1ページの掲載)



ところが、それから13年後の1960(S35)年の時刻表を見ると、あら不思議。列車本数は倍に増えていますが、それにもかかわらずすべての列車がこの駅に停車するようになっていました。
ほかに全列車が停車するような駅は、着時刻と発時刻がセットで書かれているような大きな駅ばかりであることから考えると、これは破格の扱いだと言えます。



(上)1960年ソ連国鉄時刻表の表紙。 (下)チューラタム駅の時刻(赤線部分。片道で1ページの掲載)

baikonur_4.jpg

それもそのはず。13年の間に、この駅はある重要な施設の最寄り駅となっていたのでした。

その施設とは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射基地。

1955(S30)年に建設されたチューラタム基地はソ連核戦略の最前線にして最高機密の場所でした。冷戦時代、ここで核弾頭を搭載したミサイルが西側陣営に狙いを定めていたわけです。

この駅からその北に位置する基地までは長大な引き込み線も設けられ、まだ航空輸送が発展途上だった当時、広野にポツンと建つ小さな駅はミサイルに関連した物資の輸送や人員の往来の拠点となったのでした。
時刻表の変化の裏にはそんな事情があったのです。

しかしこのチューラタム基地、一般には違った名前で呼ばれています。「バイコヌール宇宙基地」-そういうとピンと来る方も多いでしょう。
ミサイルというのは言い換えれば人工衛星を打ち上げるロケットのこと。今からちょうど半世紀前の1961(S36)年4月12日、ガガーリンはここから人類初の宇宙飛行に旅立ちました。

ここがバイコヌールと呼ばれるようになったのには、冷戦時代ならではのいきさつがあります。
ガガーリンの飛行の際、チューラタムにミサイル基地が存在することはアメリカの軍事筋にもバレていましたが、ソ連当局は機密保持の観点から一般の人々を欺瞞するために、ここから数百キロも離れたまったく別の街・バイコヌールをロケットの発射地点として発表したのです。

以来、チューラタムのミサイル基地は宇宙開発の舞台ではバイコヌール(Baikonur)として世に通用し、最終的にはそれがこの地域の名前としても公式に定められています。もはや冷戦が完全に終結した今日では、核戦略を担うという役割は消えましたが。
ちなみに、ここはロシアがカザフスタンから賃借しているという面白い土地です。

(画像をクリックすると拡大します)
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プロフィール

ttmuseum

Author:ttmuseum
「20世紀時刻表歴史館」館長。
サラリーマン稼業のかたわら、時刻表を中心とした交通・旅行史関連資料の収集・研究・執筆活動を行う。

<著作>
「集める! 私のコレクション自慢」
(岩波アクティブ新書・共著)

「伝説のエアライン・ポスター・アート」
(イカロス出版・共著)

「時刻表世界史」(社会評論社)

その他、「月刊エアライン」「日本のエアポート」(いずれもイカロス出版)、「男の隠れ家」(朝日新聞出版)などに航空史関係記事を執筆。

<資料提供>
「昭和の鉄道と旅」(AERAムック)
「日本鉄道旅行地図帳」(新潮社)
「ヴィンテージ飛行機の世界」(PHP)
の他、博物館の企画展や書籍・TVなど多数。

「時刻表世界史」で平成20年度・第34回交通図書賞「特別賞」を受賞。

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