シナイ半島にも路線を伸ばしたイスラエルのバス(1972年)

イスラエルのメジャーなバス会社である、エッグバスの時刻表です。
これは、イスラエル南端・アカバ湾に面した観光都市であるエイラートを中心とした路線が掲載された地域版。
イスラエルの地図をみていただけるとお分かりのように、エイラートは東はヨルダン・西はエジプトに挟まれて、イスラエル南部がペン先のように細くなった突端に位置しています。

そんなエイラートからの路線は、テルアビブはもちろん、エルサレムやハイファといったイスラエル主要都市に伸びていますが、それらの中にはこの時刻表が発行された時代ならではの街の名前も見えます。
-それは"OFIRA"。
耳になじみのない名前ですが、その右に小さく書かれた"Sharm e Sheikh"がヒントになるでしょう。
1967(S42)年の第三次中東戦争の結果、イスラエルはそれまでエジプト領だったシナイ半島を占領。スエズ運河以東を支配下におさめました。
"Sharm e(l) Sheikh"は、シナイ半島突端近くに位置する港町“シャルム・エル・シェイク”のことですが、イスラエルはここに入植地"OFIRA"を建設したのです。
"OFIRA"とはソロモン王の物語に出てくる金鉱の街・オフィールに関連した名前。さすが神々の国は地名の付け方も神がかり的でした。
ちなみに、中央下に見える"FIORD"もアカバ湾に面したシナイ半島の景勝地で、元々はエジプト領です。
時刻表によるとエッグバスはエイラートからオフィールまで一日2往復、また、テルアビブ~オフィール間に一日1往復を運行していたようです。
但し、欄外に注意。すべてのバスは日曜~金曜の運行で、土曜日は運休。安息日が厳格に守られます。
この時刻表の翌年、1973(S48)年10月の第四次中東戦争を契機に、イスラエルとエジプトは和平に合意。シナイ半島は1982(S57)にエジプトへ返還されることとなります。
占領地へのバスが往来したエイラート~シャルム・エル・シェイク間ですが、平和が戻った現在は、アカバ湾を往来するクルーズ客船が両都市に寄港することもあるようです。
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エッグバスのオフィシャルサイト
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